スイートペットライフ
休暇明けの一日は机の上の山積みの仕事を片付けるのにほとんど費やされた。

定時を少し過ぎたころ諏訪君が先に降りているというジェスチャーをしてからフロアから出て行った。その様子を見ていた佐和子先輩が「あとやっておくから」と言ってくれたので今日もお言葉に甘えた。

ちゃんと佐和子先輩のお気に入りのコスメをお土産に買っておいてよかった。

パソコンの電源を落として、私も少し遅れて諏訪君の後を追う。

階段を下りるとそこで諏訪君が待っていてくれた。

「結構早く抜けられたんだな?」

「佐和子先輩が代わってくれたから」

そんな風に言いながら二人どこに向かうとも言わずに歩き始める。

駅に向かう途中に大きな公園がある。その前で私は立ち止まった。

「お店に入っちゃうとちゃんと話できないかもしれないから」

そう伝えて公園へと足を向ける。

私のそんな態度に諏訪君は何も言わずについてきてくれた。

「ここでいい?」

ベンチの前で了解を取ると、頷いてくれたのでそこに二人で腰をおろした。

ベンチからは広い公園が見渡すことができ、奥にある遊具は子供たちではなく高校生のカップルが楽しそうにブランコを漕いでいた。

「無邪気だな……」

諏訪君も同じカップルを見ていたようで呟く。

「そうだね。あの頃にもし諏訪君と出会ってたら私達もああやってブランコ漕いでたかな?」

「それってどういう意味?」

お互いのほうを見ずに話を進める。
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