スイートペットライフ
そう言いながら二人でクスクス笑っていると、停まっている一台の見慣れた車に目がとまる。

車から降りて来たのは、久しぶりに目にする大倉さんだった。

「こんばんは。二人でおでかけ？」

笑顔らしきものを浮かべているが、私の知っている大倉さんの笑顔じゃない。どこか寂しそうな、無理矢理とって付けたような笑顔。

「こんばんは。もしかして事務所に用事ですか？」

諏訪君が答える。私は隣で言葉も出せずに大倉さんを見つめるだけだ。

「所長さんと約束があってね。ここで待つように言われたんだ」

大倉さんはそう答えた後、私のほうに視線を移した。

「元気そうだね。よかった」

変わらない声に続き頭を撫でられると思った私がいて、でもいつまでもその感触がなくてやっと「あぁ、もう撫でられることはないんだ」と悟る。

ジワリと涙が浮かんだ。誰にも見られたくない。

「諏訪君行こう」

そう言って諏訪君のスーツを引っ張ると大倉さんに挨拶もしないで駅に向かって歩き出した。
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