スイートペットライフ
19. 真実を知る二人の女
11月に入ってコートが手放せなくなった頃、ようやく私は何件かの部屋の物件を紹介してもらうことにした。
大倉さんの言葉に甘えて気持ちの整理が済むまでと思っていたけれど、あの部屋にいればいるほど彼との生活を忘れることができないと、この一ヶ月で思い知らされた。
少し考えれば分かるはずなのに、それでもこの部屋にいたいと思い続けた自分がひどく滑稽だった。
仕事は相変わらずの忙しさで年末調整の時期になって日々追われるように仕事をしていた。
今まで貯めたお金も、引越しでほとんどなくなってしまう。
残業はお財布にもグジグジと色々考えてしまう頭にも、ありがたかった。
***
そんなある日、二階の受付からお客様が来ていると連絡があった。一階の北極星で待っているとのことだったので、佐和子先輩に来客の件を伝えて一階へと降りて行った。
“カランコロン”北極星のドアを開けると昔ながらのドアベルが鳴って出迎えてくれる。
「いらっしゃい」
奥さんが声をかけてくれたので、軽く会釈をする。そして店内を見渡すといつかと同じように背後に男性を立たせて優雅に紅茶を飲む女性をみつけた。大倉さんの奥さん――楓さんだ。
私が楓さんの姿を確認すると同時にあちらも私に気がついたらしく、後ろの男性に何かを言うと、指示をもらった彼が私に近付いてきた。
「および立てして申し訳ありません。あちらで楓様よりお話があるようなのでお時間いただけますでしょうか?」
そう言われて向かいの席を促される。
嫌だと逃げ帰る雰囲気でもない。仕方なく私は向かい席に腰をおろした。
「お呼び立てして申し訳ないわ。あなた私の事覚えているかしら?」
忘れられるわけないじゃない。あの日の事。
「はい。大倉さんの奥さんですよね?」
「そうそう。だけど肝心なところが抜けてるわ。元奥さんよ」
にっこりと目の前の美人が満面の笑みを浮かべる。
大倉さんの言葉に甘えて気持ちの整理が済むまでと思っていたけれど、あの部屋にいればいるほど彼との生活を忘れることができないと、この一ヶ月で思い知らされた。
少し考えれば分かるはずなのに、それでもこの部屋にいたいと思い続けた自分がひどく滑稽だった。
仕事は相変わらずの忙しさで年末調整の時期になって日々追われるように仕事をしていた。
今まで貯めたお金も、引越しでほとんどなくなってしまう。
残業はお財布にもグジグジと色々考えてしまう頭にも、ありがたかった。
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そんなある日、二階の受付からお客様が来ていると連絡があった。一階の北極星で待っているとのことだったので、佐和子先輩に来客の件を伝えて一階へと降りて行った。
“カランコロン”北極星のドアを開けると昔ながらのドアベルが鳴って出迎えてくれる。
「いらっしゃい」
奥さんが声をかけてくれたので、軽く会釈をする。そして店内を見渡すといつかと同じように背後に男性を立たせて優雅に紅茶を飲む女性をみつけた。大倉さんの奥さん――楓さんだ。
私が楓さんの姿を確認すると同時にあちらも私に気がついたらしく、後ろの男性に何かを言うと、指示をもらった彼が私に近付いてきた。
「および立てして申し訳ありません。あちらで楓様よりお話があるようなのでお時間いただけますでしょうか?」
そう言われて向かいの席を促される。
嫌だと逃げ帰る雰囲気でもない。仕方なく私は向かい席に腰をおろした。
「お呼び立てして申し訳ないわ。あなた私の事覚えているかしら?」
忘れられるわけないじゃない。あの日の事。
「はい。大倉さんの奥さんですよね?」
「そうそう。だけど肝心なところが抜けてるわ。元奥さんよ」
にっこりと目の前の美人が満面の笑みを浮かべる。