スイートペットライフ
そして二人分のコーヒーを入れる。

「ミィ……来て」

そう言われてリビングのソファに座る。大倉さんはそのすぐ横に座った。

「ミィ、聞きたいことが色々あるでしょう。ちゃんと話をしよう」

そう言われたので北極星の奥さんの話をした。

「そうだよ。僕が最初に美空を見つけたのが北極星だった。いつもカウンターに座っていておいしそうにコーヒーを飲んでいて、時折奥さんと楽しそうに話してるな……なんて最初は思ってたんだけど、よくお母さんの話をしていただろう。あれが決め手だったかな。

僕とはだいぶ環境が違うにしても同じように母親に悩まされているのに、僕と違って純粋でまっすぐなんだなって。同じような境遇のミィが幸せにすごしているっていうことが単純にうらやましかったんだと思う」

「じゃあモデルルームで初めて話をしたときにその話をしてくれなかったんですか?」

「ただでさえ変態扱いなのにこんなのバレたらストーカーだよ!」

今さらそんなこと気にしてどうするの?もうそんなこと気にするレベルとっくに超えてる気がするんだけど。

「でもどうして一緒に暮らそうと思ってくれたんですか?」

いくら「いいな」と思っていても同居の提案となると敷居が高い気がする。

「それはね、同じような境遇のミィが幸せでいてくれることが嬉しかったから、その幸せを守ってあげたかったんだ。僕自身とミィをいつのまにか重ねてたのかもしれない」

「私の幸せ?」

「そう、ミィには笑っていて欲しかったんだ。自分が母親と離れて一人になったときみたいな思いをしてほしくなかったから」

もう大人だから十五歳のころの大倉さんのような思いはしないのに……。

そんな風に守ってくれようとしていたなんて、胸が熱くなる。
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