スイートペットライフ
テーブルに視線を落としたままの大倉さんはどこか寂しそう。

「もし仮にミィのことを“好き”だとか“愛してる”なんていう感情の中に置いてしまったら同じように壊れてなくなるかもしれない。結婚だって同じ。だから離婚したって言うのが怖かったんだ。もし教えてミィが許してくれればもう一度一緒に住むようになるだろう?そうなったときにもう“好き”っていう気持ちを誤魔化す自信がなかったんだよ」

自嘲したような笑顔を私にむけた。

「そんなこと誤魔化してなんて欲しくなかった。私はペットだって言われる度に傷ついていたのに」

責めるように言うと「ごめん」と小さく謝られて頭を撫でられた。

「いいえ、私もきちんとオミくんに気持ちを伝えてなかったし」

「ちょっと待って、今もまだちゃんと聞いてないけど……」

「言いましたよ。帰ってきてくださいって」

「え?それだけ?」

不服そうに口をとがらせる大倉さん。大の大人がそんな顔しないでよ。

だけど私は自分の思いを口にした。

「オミ君、私今まで付き合ってきた人は、私の外見だけみて好きだって言ってくれている人がほとんどだった」

「そう、かわいいからそれも分からないでもないけど」

にっこりとほほ笑まれる。

「もう!茶化さないで」というと「本気なのに」としょんぼりされた。

「だけどオミ君は丸ごと私を包んでくれたでしょ?“無償の愛”みたいな。それがすごく心地よくて、オミ君がこの部屋にいないときでも、“いつかのオミ君”が台所にいて私に笑顔をむけてくれるの。もう心がオミ君でいっぱいで……これって好きってことでしょう?」
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