スイートペットライフ
「どうぞ。ミルクティだよ。熱いからちゃんとフーフーして」

「はい。ありがとうございます」

うっかりしていた。ここはまだ大倉さんに案内されている途中の部屋だった。

差し出されたミルクティはアールグレイの香りが豊かで、気持ちを一気に落ち着かせてくれた。

「で、少し落ち着いた?」

そういって、大倉さんは私の隣にあるオットマンに座って自分のマグカップを持ち上げて一口飲んだ。

「あ、はい。突然すいませんでした」

ぺこりと頭を下げる。

そうだ、こんな夢みたいなところで油を売っている暇はない。

何とかお金を工面して部屋を探さなくては。

佐和子先輩に相談しよう。居候は…旦那様がいるから無理か。

「あの!私帰ります!ごちそうさまでした」

そういってスクッと立ち上がると、


「どうしたんだい、いきなり。まだこの部屋の話はしてないじゃないか」

「あの、その話なんですがちょっとのっぴきならない事情がありまして…」

「今どき‘のっぴきならない’とは聞き捨てならないね。相当大変な事情らしい」

大倉さんはそう言って顎をさする。

「そののっぴきならない事情を説明してもらわないと納得できないな」

「納得ですか…」

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