スイートペットライフ
「そうだ。僕は君にこの部屋を紹介してるのに事情も言わずに帰るなんて言われるとは思わなかったね」

そうか、わざわざ時間をさいて案内したのに、訳もわからないまま帰られては上司に報告できないだろう。

「そうですよね。すいません、ちょっと色々焦ってて」

「ん?何をそんなに焦ってるか言ってごらん」

そう言って、ソファから立ち上がっていた私の腕をひき、再度ソファに座らせた。

「とてもお恥ずかしい話なのですが…」

恥を忍んで経緯を話す。

初めて会った他人に、こんな話をするのはどうかと思うが誰かに聞いてほしかった。

自分が悪いんじゃないと言ってほしかった。

「そうか、そんなことが…大変だったね」

そう言って、大倉さんは私の頭を撫でた。

「はい…」

返事をしながら、どうしてこの人は私の頭を撫でているんだろうと考えたが、その手の暖かさが今はとても気持ちがよくて、深く考えずにされるままにしておいた。
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