スイートペットライフ
***

「じゃあ、ここと、ここね、サインして」

「はい」

私が高らかに入居宣言?をすると、大倉さんはすぐに契約書を二部ずつ取り出して、私にサインするように促した。

「あの、確認なんですけど、家賃は本当に三万円で大丈夫なんでしょうか?」

「あぁ、心配しないで。大丈夫」

そう言ってニコニコ笑う大倉さん。

私も住むところが確保でき(しかも素敵な部屋で)、直近の未来への不安がなくなったことに安堵して、一緒に笑っていた。

何箇所か言われるままにサインをすると

「ここで最後。さぁ、これでこのお部屋は君の部屋になったよ」

そういって今日一番の笑顔をみせて、目じりの皺を濃くした。

「ありがとうございます!このご恩は一生忘れません」

そう言った私に

「本当に?」

と顔を覗き込んで聞いてくる。整った顔が間近に迫ると頬の温度が上がった気がした。

「は…い。私にできることなら」

顔が近すぎて他のことが考えられない。

「絶対だよ。約束」

そう言って形のいい唇をくっと上げた。
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