スイートペットライフ
「ほら、ここに君のサインもある」

確かに、これは私の字だ。間違いない。つい一週間まえこの部屋のここでサインしたのだから。

「ペットってどういうことですか?」

とりあえず一番重要と思われる項目について質問してみる。

「んー。愛玩用の動物ってこと」

「言葉自体の意味を聞いてるんじゃないんです!どうして私がペットなんですか――!!」

私の強くて長い堪忍袋の緒が粉々にブチ切れた。

「だって、僕、君を飼いたいんだもん」

満面の笑みに後光まで見えた。

「飼いたいんだもん……だもん…だ…も…ん」

ブツブツと言葉の意味を考える。言葉の裏の意味もくまなく頭の中で検索をかける。

どういうこと?

飼いたい?

もしかして、愛人?いやいや、私にそんな他人を喜ばせるような恋愛スキルもあっちのスキルもないんだけど。

いや、そのスキルが備わっていたとしても私には愛人なんて高等な仕事が務まるとは思えないし。

愛人ってもっと、その‘出るところ’と‘出ないところ’の差がきっちりしていて、綺麗な巻き髪にふさふさの睫毛で目と唇をいやらしく半開きにして男性を喜ばせるみたいな女子がすることで……。

ブツブツ自分の世界で自分と会話していて、ふと現実世界に目を向けた。
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