スイートペットライフ
「乾杯!」

と嬉しそうに言った。

そんな嬉しそうにされてグラスを合わさないわけにもいかない。

しかしグラスを持つ二人の温度差は赤道付近と北極ぐらいある。

「さぁ、沢山食べて。どうみてもミィはやせ過ぎだ」

そう言って早く食べるように促す。

でも私は他のことが気になって仕方がない。

「あの、ミィって…」

「ミィって君のことだよ。美空だからミィ。かわいいでしょ?」

可愛いでしょって聞かれても。でもこんな些細なことで言い争って仕方ない。

多分彼は何を言ってもその呼び方を変えるつもりはないだろう。

「ここにね、書いてる。まずは名前をつけましょうって」

そういって嬉しそうに私に見せたのは【室内犬の飼い方】という本。


「犬のしか売ってなくてさ、アマ●ンでも楽●でも。でもほぼ一緒でしょ」

中身をぱらぱら見ながら声を弾ます。

あぁ、うすうす気が付いていたけど、このひときっと馬鹿だ。しかもたちの悪いタイプの。

この世の中のどこに人間の飼育の仕方などという本が売っているというのだ。
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