スイートペットライフ
***

「こ、ここって」

タクシーから降りると、私は一軒のビルを見上げていた。

ここは私にとって敷居が高すぎて背面ジャンプしないと入れないぐらいの高級店が立ち並ぶ通り。

「行くよ~」

例のごとく私の手を握って、すたすたと歩く。

「あの、どうしてこんなところに…」

「どうしてって、トリミングだよ。ト・リ・ミ・ン・グ」

自動ドアが開いて、中に入るとすぐに綺麗な女性が声をかけて来た。

「大倉様いらっしゃいませ」

そう声をかける深々と頭を下げた。

「あぁ、この子よろしくね」

「かしこまいりました」

当事者の私を完全に無視して話が進んでいる。

ビルに看板なんかがかけられてなかったので何をする所なんだろう。トリミングってことは…。

頭の中にプードルの姿が浮かぶ。

ぶんぶんと頭を振って変な想像をかき消す。まさかね…。
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