スイートペットライフ
「ねぇ、どうしたの?なんか様子おかしいよ」

「別にたいしたことじゃない」

「もしかして、私じゃ頼りない?大丈夫、三橋興産なら入所してからずっと事務処理をしてきたし、毎月の流れや決算の時の流れなんかもちゃんと把握して…」

「そういうことじゃない!」

いつも穏やかな諏訪君が声を荒げた。

「じゃあ何?何が不満なの?」

廊下で二人が言い争っているのを他の所員がちらちらと見てくる。

「ちょっとこっち来て」

諏訪君が私の手を引いて誰もいない給湯室へと入る。

「青木が頼りないとかじゃないんだ」

諏訪君が言う。

「じゃあどうして?何だかいつもと様子違うよ」

「……はぁ」

私の問いかけに諏訪君はこちらをじっと見ただけで何も返してこない。

「ねぇ……」

「今日のその格好どうしたの?」

いきなり話題がそれて少し驚く。

「ちょっと、心境の変化。変かな?」

正直に飼い主の趣味とは答えられない。

「男じゃないのか?」

いつもよりも真剣な目でそう聞かれて戸惑った。

「諏訪君まで、佐和子先輩と同じこと言うんだね。違うって。私も少しは女の子らしくしようと思っただけだよ」

この場合の模範解答といえるだろう。

「そっか……ごめん変なこと聞いて。もし三橋興産の件で何か困ったことがあったらすぐに俺に電話して。絶対」

いつも通りに戻った諏訪君に安心して笑顔になる。

「わかった!でも大丈夫だと思うよ。心配しすぎ」

そう答えた私に「はぁ……」と一つ落胆に聞こえる溜息を諏訪君がこぼした。

こんな私にでも優しいんだな諏訪君。

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