最愛～あなただけが～
「答えるんだ。
　どうして無理して食べた？」

　鷹野さんは、もう一度聞いた。

「･･･会長のご好意なのに、苦手だからって目の前で食べないわけにはいかないと思ったからです。
　だから、残さずに食べました。」

　私は、正直に答える。

「バカ！
『おいしかったです。ご馳走さまでした』なんて無理しやがって。」

　鷹野さんは、私の額を軽く指で弾いて、半ば呆れたように笑った。

「来年は、うな重にならないように手ぇ回しとくから、安心しろ。」

　それと。と、鷹野さんは続ける。

「今後は、苦手なモノを絶対に無理して食べるなよ。
　都築さんがまた具合悪くなるんじゃないか心配になるから。･･･な？」


　優しい、鷹野さんの眼差し。


「･･･はい。」



“来年は”


　その一言は、来年も私がこの会社にいることを前提に考えてくれているということ。

　たったそんな一言で、私はまた1年、頑張れそうな気がした。

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