片想連鎖 ~伝えたい心~

私はカイに肩を抱かれたまま、保健室に着いた。

今までカイは、私に触れる様な事はしなかったから少し驚いたけれど、昨年の夏に男バスの先輩が肩に触れた時の様な嫌悪感は、不思議と感じられなかった。

保健室には誰も居なくて、カイは私をベッドに座らせ、その向かい側のベッドにカイが腰を下ろした。

長い間話をしていなかったから、変な緊張感はあったけれど、助けられた嬉しい気持ちは素直に出てきて言ったんだ。


「カイ…。助けてくれて、ありがとう…。」


「…ん。てか、もっと早く知れたら良かったんだけどな…。」


「そう言えば、カイは何で分かったの?クラスも凄く離れてるし…。」


「あぁ。柴田が俺を呼びに来たんだよ。」


「そっか…。柴田君が呼んでくれたんだね。後で柴田君にもお礼言わなきゃ…。」


「…だな。」


と、カイは頷いていたけれど、
『ていうか、柴田が助けに入れば早かったのに、あいつ、あの女の先輩にびびっててさ?』
と、文句交じりに笑ったんだ。


「それと…カイ?あの女の先輩に何か耳打ちしてなかった?」


「ププッ。それ聞く?」


「えっ?う、うん?」


「”普段の行いの良し悪しで、どうにでもなるんですよ?俺が言えば先生なんかチョロい”って言ったんだ。」


「うわぁー…。確信犯っ。鬼っ。」


悪態をつく私にデコピンをしてきたカイは、
『それが助けた人に対する態度か?』
と笑った…。

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