片想連鎖 ~伝えたい心~
倦怠《 ナオ side 》
--- 週末の練習試合。
俺は、練習試合が始まってからの”佐々木”という人物に不可解な気持ちを抱いていた。
試合が始まって数分の間は、他のチームメイトのディフェンスについていたんだ。
それが、俺がスリーポイントを決めた後、突然そいつは俺をマークし始めた。
初めは監督の指示変更かと思って、気にしない様にはしていた。
なのに、佐々木という男は俺が次にスリーポイントのシュート体勢に入った時に、俺の目の前で言ったんだ。
『あきな。』
俺は、その名前に動揺して体勢を崩してしまい、ボールがネットを揺らす事はなかった。
試合中なのにも関わらず、走りながらそいつに目を向けたんだ。
佐々木というその男は、俺にディフェンスについた直前とは表情を一変させていた。
敵意剥き出しの鋭い眼差しで、俺を見ていた。
こいつ…明奈を知ってるのか?
俺と明奈との事もか?
いや…明奈は自分の事を必要以上に話さない。
もしかしたら名前だけは知っていたのか?
それなら”ナオ”という愛称だけで勘づいて、
”あきな”の名前を出して俺に鎌をかけて…
動揺した俺を見て決定付けたんだな。
そう考えれば、試合開始からのこいつの行動の意味が理解出来ると、俺は思った。