片想連鎖 ~伝えたい心~
午前中の試合が終わるまで、佐々木という男は監督の指示を全て無視して、俺のディフェンスをしていた。
そのせいで相手側のリズムは乱れ、大差で俺のチームが勝ったんだ。
昼の休憩に入っても、佐々木は監督に注意され続けていた。
あんな無茶苦茶な事をしたんだ。
それは当然の事だと俺は思った。
平山がチームメイトにお茶を配り終わり、俺の隣に腰掛けた。
俺が昼食にしようとしていると、佐々木がいた方から女の子の怒鳴り声が聞こえてきたんだ。
「何してんの?試合メチャクチャじゃん!」
マネージャーかな?
まぁ、確かに言いたくもなるよな…
と俺は思いながらも、そっちに目をやる事なく食を進めていたんだ。
その時、俺の隣に座っていた平山が、
『あっ…。』
と声をもらした。
『どうかした?』
と聞いても、表情を曇らせながら首を横に振るだけだった。
平山の反応が不思議だったけれど、俺は追及する事はしなかった。
だけど、俺がふいに顔を上げて相手チームの出入口の方を見た時、平山が何故表情を曇らせたのか、嫌でも分かったんだ。
そこには、
佐々木の前に立つ、
明奈の姿があった…