片想連鎖 ~伝えたい心~
絵里はキョロキョロさせていた目を一点に留め
『あたし、ああいう配慮のない人とかヤダ。』
と言ったんだ。
何に対して言っているのか分からなかった私は、絵里に聞こうと話しかけた。
「なんの配慮?店員さん?」
「ん?いや、違う。」
「ああー…。喫煙席にいる奴らの事だろ?」
「そうそう。佐々木、よく分かったね?」
「客少ないだろ。そん中から探したら、一目瞭然じゃねぇか。」
「は?ねえ、絵里とカイが誰の事を言ってるのか、全然分からないよ。喫煙席にいるの?」
私がそう言って喫煙席の方を見ようとしたら、美樹が慌てて私の顔を両手で覆って、視界を遮ったんだ。
『喫煙席に妊婦さんがいてね?その一緒にいる人が煙草を吸ってるから、絵里は配慮がないって言ったんだよ?』
と、凄い早さで説明をしてきた。
私は、美樹の両手を掴んで下ろしながら、その人達の方に目を向ける。
「えー?それなら別に、隠す事ないじゃん?びっくりしたよー…み…。」
私は最後に”美樹”と言いかけて、全てを言い終える事が出来なかった。
身体中の力が一気に入って、私は顔を強ばらせた…。
美樹が何故、わざと視界を遮ったのかよく考えれば良かったんだ…。
私の視線の先には…
お腹を膨らめた…
【 あの子 】が居たんだ…