片想連鎖 ~伝えたい心~
『明奈に、触れないでね?!』
その言葉を忘れていた訳じゃない。
それどころじゃなかったんだ。
俺は、赤信号で足を止めていた人を押し退け、明奈の腕を掴んだ。
目の前には、クラクションを鳴らしながら走り去るタクシー。
間に合って良かった…
俺がホッと安心して溜め息をついたその時、明奈が悲鳴を上げたんだ…。
「いやぁぁっ!!はっ…放してぇーっっ!!」
明奈は顔を真っ青にしながら、身体を激しく震わせていた。
周りにいる人が俺を不審者かの様に見ていたが、そんなのはどうでも良かった。
俺は、
『明奈っ!!俺だよ!良く見ろ!!』
と明奈の肩を揺さぶる。
明奈はその俺の腕を振り払いながら、漸く俺を見上げた。
「カ……カ…イ。」