片想連鎖 ~伝えたい心~

ナオを待つ間、何人もの生徒がこのクヌギの木の前を通り過ぎて行ったけれど、誰一人私の存在には気付かなかった。


そりゃそうだよね…
こんな中学生にもなって木登りとか…

しかも女子がっ!
しかもカブトムシ目的に!

気付かなくて当たり前だよね…


半泣きになりながら待っていたけど、ただ待つのも情けなくなってきて、私はあと30㎝の近さにいたカブトムシに手を伸ばしたんだ。


せめて、美樹にカブトムシを見せる!
本人は嫌がってたけど…


そう身を乗り出して手を伸ばした時、もう少しで捕まえられそうだったカブトムシが、飛んで逃げてしまった。


「えっ…?」


その言葉と同時に、私はバランスを崩して幹にオデコを強打。


――― ゴスッ…


「イッタァー…!」


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