片想連鎖 ~伝えたい心~
「傷口、深そうだけど大丈夫かな?痕にならないかな?」
私がそう心配してナオに聞けば、ナオは、
『女の子じゃないんだから、傷痕くらいなんともないよ。』
と言って、続けて話し出した。
「逆に傷痕が残ればいい…。」
「えっ?!私への戒めにですか?!」
「ハハッ!違うよ。」
「じゃあ、何?私は嬉しくないなー…人を傷付けた痕とか…。」
「ここに。”明奈”が刻まれた。そういう意味だよ。…だから、俺には嬉しい傷痕。」
「ナ…ナオ…。」
私は顔を赤くしながら、ナオの傷口にハンカチを巻き付け、照れ隠しの様に、
『帰ろっか?!今日は反対側の手を繋ぐね!』
と言って、ナオの右手に自分の左手を絡めた。
その手を引いたナオが、私の耳元で囁いた…
「俺は、明奈だけだから。」