片想連鎖 ~伝えたい心~

---その日の放課後。

体育館の耐震補強工事が入り、今日から3日間、部活動が『各自自主練』という名の休みになった。

美樹は『久しぶりに放課後デート』と、嬉しそうに彼氏と帰って行った。

私は、日直だった絵里が日誌を書き終えるのを待ち、それから二人で教室を後にした。


『日誌の【今日の出来事】とかの欄、何書きゃいんだよ?だよねぇ。”担任のズラが、ズレてました”って書いてやりてぇー!』
とか絵里が言い出すから、爆笑しながら廊下を歩いていたんだ。


他のクラスの前を通りかかった時、一人の男子が教室の中から絵里に声をかけてきた。


「おーい!ムラムラー!!」


「…ちょっっ?!佐々木ぃ!まるで『エロい人』みたいに呼ぶんじゃねーよ!『中村さん』て呼べや!」


『ムラムラ』って…。
中村の『村』で、ムラムラですか…?
女の子に『ムラムラ』は無しでしょ。
せめて、中村の『中』で『ナカナカ』じゃない?

…や、でも言い辛いか。
じゃあ、読み方変えて…
『ソンソン』?『チュウチュウ』…?

ーーーっっ!!!
ナシナシナシナシ…!!
やっぱり、無難に『中村さん』でしょ?!


とか、私がそんなくだらない事を考えているうちに、佐々木君は廊下まで出て来ていて、絵里と話し始めていた。


「今日の自主練って、女バスはどうなったんだ?」


「は?何言ってんの?工事終わるまで普通に休みに決まってんじゃん。」


「はぁ?!マジで?うちの部長は『室外メニュー』出してきたぞ?!」


「うわぁ…。男バス頑張るねぇ…。ま、頑張れや!」


勝ち誇った笑みを浮かべた絵里が、佐々木君の肩をバシバシ叩いた。


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