片想連鎖 ~伝えたい心~
燻り
佐々木君と初めて話したその日の夜、久しぶりに鮮明な夢を見た…
夢の中の私は、中学生の時に着ていたセーラー服姿をしていて、数人の女の子とお菓子作りの話をしていた。
一人の女の子に、
『明奈はお母さんがケーキ作りとか得意だから、もちろん明奈もそうなんでしょ?』
と話しかけられて、
『うっ…うん。とりあえずはね?』
とホラを吹いた。
本当は”超”が付くほど、お菓子作りが苦手だった。
お母さんが何でも作れちゃうから、私はそれを食べるばかりで、何も作った事がなかったから。
『今度、教えて?』って言われたらどうしよう?とか思って挙動不審になっていた。
その私の背後から、背の高い男の子がニョキっと顔を覗かせて話しかけてきたんだ。
『じゃあ、藤原。今度、俺にクッキー作ってきて?』
『えっ?私が?!』
『うん。藤原が、作ったのを食べてみたい。』
そう言った後、その男の子は私にしか聞こえない位の小さな声で『毒味だよ?』と言って、いたずらっ子の様に笑った。
夢の中の私は、その男の子の事がずっと前から好きで『毒味だよ?』と言われても、舞い上がりそうな位嬉しかった…