片想連鎖 ~伝えたい心~
結衣と話していても、俺の言いたい事は伝わる気配がなかったから、俺は自分の着ていたスーツの上着を脱いで、結衣の肩に掛けた。
「なんで?海斗、これ着てなくていいの?」
「俺の安心料だよ…。」
「…?」
「んな格好でうろつくなっつーの!そんなに男からエロい目で見られたいのか?お前はっ。」
「んー。一人に見て貰えればいいかな。」
「じゃあ、そいつにだけ見せてろよっ。」
「…見せてるんだけどね?」
「…は?」
俺は、結衣が見せたいと言った男がこの教室内にいるのかと思って、探すようにキョロキョロと見渡していた。
眉間に皺を寄せながら探している俺に、結衣は呆れ顔をしてため息をついた。
その後、表情を緩めて微笑みに変えながら…
「…ばーか。」
と、呟いた。
俺が結衣の気持ちに気付くのは、
まだ先の話…。
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