誠につもる白雪かな
第三章

九 いざ、池田屋へ

面白や人の行来の景色にて 


世はみな花の盛りとも 


的のたがはぬ星兜 


魁(さきがけ)したる武者一騎 


仰々しくも出たばかり 


そりゃ動かぬわ引けやとて 


かの念力にあらはれし 


例の鐘巻き道成寺 


いのらぬもののふわふわと 


なんぼうおかしい物語 


それは娘気これはまた 


曲輪をぬけた頬冠り 


おやまの跡の色男 


立ち止まりてはあぶなもの 


見つけられたる泡雪の 


浮名も消えて元の水 


流れ汲む身にあらねども 


変わる勤めの大鳥毛 


台傘立て傘挟みばこ 


みな一様に振り出す 


列を乱さぬ張り肱の 


堅いは実にも作り付け 


さてその次は鬼の手のぬっと出したは見る人の 


傘つかむかと思はるる 


それを笑いの手拍子に 


切狂言は下がり蜘蛛 


占(うら)良し日良し道しるべ 


よい事ばかりえ
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