ハンバーガー質小井店。
あれも、これも、と手に取りながら裏表紙を読み、籠に入れる、本棚に戻すを繰り返す。
そんなことをしていたら、籠の中には何十冊もの漫画で溢れていた。
またやってしまった…
籠を見下ろし額に手の平を当てて、はぁっと溜め息を一つ。
また万札が飛んでいく…
籠の前にしゃがみ込んでやることは、この大量の漫画を買う物と戻す物に分けること。
流石にこれは買い過ぎだと、頭の中で部屋に積み重なっている漫画を思い浮かべ、買う籠よりも戻す籠の方に多く入れていく。
あー、これは…
いー、これも…
うー、これもか…
えー、まぁしょうがない…
おー、のー…
最後の一つの漫画を掴もうとしたが、漫画は先に伸びてきたスラリとした綺麗な手に連れ攫われる。
「これは、私のオススメだからこっちの籠ね。」
幻覚が喋ったっ!!
何故、そっちが買う籠だって知っているんだ!?
「ねぇ、貴方って単純だって言われない?あと、よく騙されるタイプ。」
「……何で、知って―…」
「だって分かり易過ぎる。きっと私から話しかけられるなんて思いもしないから、これが幻覚だと思っていることも、コッチの籠に本を入れる時の貴方の情けない顔で明らかに買わない本だって分かる。」
「……」
「っで、私は本物だって分かってくれた?」
「……マジで?」
「マジもマジ。久しぶりに会ったから私の顔忘れちゃった?」
ぶんぶんぶん、と勢いよく顔を振る。