ハンバーガー質小井店。
攻防2回戦開始。
来るモノ**、去るモノ**。
某ハンバーガー店は、悪質なクレームも暴力沙汰も強盗もある。
それは他店の話で、ウチのお店の店長は、クレーム等に対してはペコペコとひたすら謝罪して穏便に済ませてしまう人だから、暴力沙汰になったことは無い。
単価が安いせいか、客層もそれなりので、特に長期の休みに入ると、酔っ払いや不良やらギャル系が増える。
その中で一番苦手とするのは、"酔っ払い"で、高校生は22時までしか入れないけれど、あと少しで上がりだって時に現れたりする。
まだ夜なら許せる。
夜に飲んで小腹を満たすのは当たり前なんだろうし、ラーメン屋よりウチのお店を選んで来て頂けて感謝もする。
でもね、でもね…
「ねーねーお姉さん、オススメなにぃ?俺さぁー、ちゃんと金持って来てっからさー奢ってあげてもいーよ?」
「いや…奢ってもらうのはちょっと…」
「じゃぁさ、一緒に食べてよー。隣にいるだけでいいしさぁ。ついでに晩酌してよっ」
「いや、あの…仕事中な―…」
「――お客様…」
朝の6時に来る酔っ払いってどうなの?
しかも拘束時間1時間。
店長がフォローに入らなかったらセコム呼んじゃうところだったからね。
30歳程のチャラい男。
何故か私はこーゆー輩に絡まれる。
そう言えば彼も…
「ねーっ!俺はミカちゃんがいいのぉー!!」
ってか、"ミカちゃん"じゃないし。
「従業員に絡むのは辞めてください。警察呼びますよ!」
おっ店長、珍しく強気だ。
いけいけ!!なんてことを思いながらをカウンターをチラチラと見ながら厨房へ身を隠す。
今ならカッコ良く助けるヒーロー役ができた筈なのにね、と思い浮かべるのは彼のこと。
あの人がこのお店に初めて来店した時のことを詳しく覚えている。
強烈なインパクトを残して行ったからだ。
今時、"スマイルください"なんて古い。
酔っ払いとかは「スマイルお持ち帰りで」とか、同世代だと「スマイルお召し上がりで」とか進化しているのにも関わらず、あの人は一直線。
寄り道を知らない人。
「スマイルください」に続き、「オススメはなんですか?」だよ?
もう少し器用にこなせないのかなと思ってしまう。
そんな彼は、行き過ぎた行動に出てしまい、お店の出入り禁止になってしまった。
物足りなさを感じる。
しつこいくらい絡んで来た存在がいなくなったら誰でも物足りなさを感じると思う。
ただそれだけの気持ちだけど、彼はタイミングが悪いんだなと実感する。
ヒーローになろうとお店で私の行動を見張っていた時はこんなに絡まれる時は無かった。
――おーい、譲くん。
見せ場ですよー!!なんて心の中で叫んでみました。