Esperanto〜偽りの自由〜
「…………ねぇちゃん……お姉ちゃん・・・」
菘が必死に呼ぶ声で、薺は目を覚ました。いつ頃から眠っていたのか全く記憶がない。薺は辺りを見回すと息を吐き、そして菘を見た。
「……お姉ちゃん・・・」
菘は今にも泣きそうな顔で見詰め、薺に口付けた。
「どうしたの」
何か夢を見ていたような気がするが思い出せない。薺は菘を抱き寄せると宥めるように背中を撫でた。
「よかった、いつものお姉ちゃんだ・・・」
「……何言ってるの・・・」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・」
薺の問いには答えず、菘は口付けを続ける。啄むような口付けは、やがて薺を深く犯した。
「……せり」
唇を離した菘は、訝しむように薺を見る。薺は訝しむような視線で我に返った。
「・・・お姉ちゃん、今、芹って言った、……アイツに会ったの……」
まるで責めるように言い募る菘に、薺はしどろもどろになった。
菘は傷付いたような目になると唇を押し付け、強引に口付けした。
「だめだよお姉ちゃん、アイツのところに行かないで。アイツのところに帰らないで」
「落ち着いてよ。……わたしは昔から、あんたのお姉ちゃんでしょ・・・」
菘の頬を透明な雫が伝う。薺は雫を舐めると頬に口付けた。
「ね、落ち着いて」
背中を摩り、落ち着かせる。菘はしゃくり上げながら薺を見詰めた。
「・・・うん、お姉ちゃんは、私だけのお姉ちゃんだよね」
もう一度背中を摩り、安心させる。
菘は薺の胸に抱かれ、幼子のように眠りに付いた。