Esperanto〜偽りの自由〜
密会


名もない丘陵を、少女達は歩いていた。先頭を歩くのは、半袖にパーカーを羽織った、勝ち気な少女。後ろを歩くのは純白のワンピースに身を包んだ気弱な少女。
そして、そんなふたりに挟まれるようにして歩くのは、悟りきった目をした少女だった。


「……此方です。なんて、此処だよ入って」


先頭の少女、芹は扉を開けるとあとのふたりを先に入れた。ふたりが入ったのを確認し芹は扉を閉める。


「……お姉・・・ゼファ」


ワンピースの少女、菘は躊躇うように呼ぶと俯いた。


「まさか、こんな風にしてまた此処に帰って来るなんて、ね……」


芹は手近なソファに腰掛けると小さく溜め息を吐いた。やがて重苦しく口を開く。


「此処が、私達3人が暮らしていたところだよ、……研究者達に、監視されながら・・・」


菘は俯き唇を噛み締め、芹は悟った目をした少女、薺を見詰めた。


「……そして、私が、禁忌を犯した場処だ……」


嗚咽を堪えるような声で、芹は言った。薺は冷ややかな目でふたりを見詰めると真っ直ぐにソファへと歩み寄った。


「……ジュンク・・・私は、一体……芹は、芹じゃないの……」


愛しそうに芹の頬を撫でる薺。芹はされるがままにされ、菘を手招きする。


「おいで、クォーツ」


菘は伏し目がちに芹を見ると芹の元に駆け寄り首筋に抱き着いた。そのまま唇を寄せ口付けする。


「……クォーツ・・・」


「・・・ゼ、ファ……」

見詰め合い、どちらともなく唇を寄せ会う。その深い口付けにクォーツは陶酔した。


「さぁ、堕ちようか」


ジュンクは囁くとふたりを抱いた。






-End-


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