無垢・Age17
 勿論無理難題に決まっている。
でも俺はみさとを驚かしたいんだ。


そして……
喜びの涙を流させてやりたい。

その日にみさとが最も気に掛けていた、橘遥と再会させたくなったんだ。




 「ありがとうございます。私もあの娘を驚かせてやりたい」

橘遥さんはそう言った。
その時思った。

橘遥さんの結婚式を其処で挙げてしまおうと。


橘遥さんが親父の会社の社長令嬢だったなんて、みさとはきっと驚くぞ。

俺はワクワクしながら、又自転車で走り回ろうと思っていた。


そして驚いたことに、入社式も其処で行うことになったのだ。

愛の鐘をアピールするためだった。




 『申し訳ありません。お嬢様に深い傷を与えてしまいました』

社長室に通された直後に彼は土下座をして謝ったそうだ。


『いえ、誉めて上げてください。この子じゃなければ見付け出すことは出来なかったと思います。彼女の心を助けようと、彼女を育児放棄した人を探し出そうとしたから……』

彼の母親はその日、橘遥さんの皮肉な運命を嘆いたようだ。

そして、全てが二人を結び付けるための軌跡だと知って、彼を擁護したのだ。


その後俺の親父が呼ばれ、愛の鐘を造作することが決まったみたいだ。




 彼からのプレゼントは指環だったそうだ。


それを買うために一生懸命アルバイトしたんことを知った社長は、彼のためにスタジオをプレゼントしようと思ったようだ。




 俺はその時チャンスだと思った。

それこそ町起こしにピッタリだと感じたのだ。


実は彼にはある企画があったのだ。

それは……

鐘を突いて永遠の愛を誓った二人の記念撮影。
神父様の居ない、二人だけのチャペル。

そんな愛の聖地としての提案だった。


もし口コミで認知されたら、過疎も解消されるかも知れないと思った。


俺はそのきっかけして貰えたらと、入社式も其処でやってもらえないかと提案した。


橘遥さんは社長の一人娘だそうだ。
将来的には、お婿さんが会社を継ぐかも知れない。

だから二人の結婚式をあの愛の鐘でと考えた訳だ。


大きな会社の入社式なら、きっとマスコミも注目すると思ったんだ。

でもこれが浅はかだとすぐ気付いた。

橘遥さんが静かに暮らせなくなる。
そう思ったんだ。
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