無垢・Age17
 そんなもん、すぐ消えると思ったんだ。

でも無理だった。


自動車工場の技術指導員の親父は転勤族だった。
だから俺は何時も好奇心の目で見られていた。

虐めの対象にもなったよ。
同級生が信じられなくなっていた。
そんな時にみさとと出逢ったんだ。


みさとの真っ直ぐな視線が、俺を好きだと言っていた。
だから俺はそんな気持ちに応えるべく、紳士的な態度で接しようと思ったんだ。


ワガママなお嬢様より、上目遣いで見るおネエ系少年より、みさとが良かった。
俺はずっとみさとと暮らしたかったんだ。


今思うと、俺はこの時からみさと一筋だったのかな?
だから誰にもトキメかなかったのかな?


そうだ。
俺はきっと、みさとと赤い糸で結ばれていたんだ。

だからみさとがこんなにも愛しいんだ。




 みさとに逢えて俺は変わった。
愛すること。
信じること。
守るべき人の存在する喜びも、教えてもらった。
だから、どんなことがあってもみさとを守り抜く。


俺は、俺の父とみさとの母親の前で誓った。


帰りの車内でも言ってみた。
本当は照れ臭くて仕方ないけど、俺の本音を聞いてもらいたくて。

みさとは泣いてたよ。
こんな俺のために泣いてくれたよ。
俺にはそれが一番のご褒美に思えたんだ。





 実は……
俺は本当は諦めていたんだ。
みさととの結婚を。


俺は本当にみさとが大好きだったんだ。
日本に戻ってきた本当の理由は、ニューハーフの彼に迫られたからだけじゃないんだ。

みさとが脳裏に浮かんできて、どうすることも出来なくなったからなんだ。

俺は思い知らされた。
本当に大好きな人が日本にいることを。

だから日本に戻って来たんだ。


俺がチェリーとさようなら出来る相手は、みさと以外いないと思ったんだ。




 俺はホームステイした時に、弟と文通を始めたんだ。

弟は俺が本当の兄だと聞かされていたんだ。
だから日本に戻って来た時に連絡したんだ。


でも弟に電話して……
みさとのことに触れ時、妹だと言われてしまった。

嘘だと思った。
ホームステイの時から恋い焦がれていたイトコが、兄妹だと知らされて……

だって弟の言う通りに、本当の妹だったらって思ってしまったんだよ。


祖母のある言葉を思い出して……


『非は全て自分にある』
と祖母は言った。




< 106 / 122 >

この作品をシェア

pagetop