無垢・Age17
 私はアイツのマンションにいた。

アイツは仕事で夜は無人になるから、鍵を貸してくれたんだ。
兄貴は彼女と……?

私はその様子を見てくるように母親から言われて東京に来たと言うのに。


(もしかしたら、兄貴が頼んで……)
私はそんなことも想像していた。


「ホストか?」

アイツに聞こえないようにこっそり呟いた。

アイツはそのホストの仕事であのド派手な衣装だったんだ。
なんせ、今日はハロウィンだった。


でも私を助けに走ったせいで汚れた服を着替えに戻ったのだった。


テーマはやはりピエロだったようだ。

色ちがいの水玉模様の服がもう一着あったのには驚いたけどね。




 さっき、此処に来るために初めてバイクの後ろに乗せてもらった。

子供の頃、母の自転車の荷台に乗ったことはある。
あれには後ろに支えがあった。
でもバイクには座席に皮のベルトのような物があるだけだった。

バウンドする度に、落ちるんじゃないかと怖い思いをした。

だからしがみ付いたんだ。


アイツの背中と私の胸が接近して……
思わず緊張して……

やらなきゃ良かったと思った。

それくらい、スリルを味わったんだ。




 でもその前に、もっと興奮したことがあった。


アイツはいきなり私の頭に手を伸ばし髪の毛をグシャグシャにしたんだ。


「何なの!?」
って思わず言ってしまった……

私は昨日親戚の家に泊まり、用意してもらったシャンプーとリンスで念入りに手入れをしてきたのだ。

それをいじくられて、頭にきたのだった。


でもその後ですぐに理由が判明した。
アイツは私の頭に合うヘルメットを探していたのだ。




 そうなんだ。
私はそのまま……
親戚の家から出発したんだ。

その朝、ウィッグとイヤリングも貸りたんだ。

アイツの手が頭に触れた時、ヤバイと思った。

だって、せっかく纏めた髪型が乱れるからだ。

カツラがポロリなんて、今どきのコントでも流行らないからな。


親戚連中は、私が東京に行くのを面白がって遊んでいたんだ。

それでも嬉しかった。
初めてのお洒落が……


(あれっ、確か 橘遥さんはロングヘアだった。ヤだ、何故間違われたのだろうか?)




 ガラス貼りのバスルームにアイツが見えて……
もっと興奮している。

私は慌てて視線を外した。



< 13 / 122 >

この作品をシェア

pagetop