無垢・Age17
 (ヤバい。ドキドキが治まらない。こんなとこ兄貴にだけは見られたくない)

私はアイツのマンションで正解だと思った。

でも、アイツがあんな格好だから興奮したんだ。
アイツったら、鏡に全身を写して悦に入っているようなのだ。




 私は気を紛らわせようと部屋の中を見ていた。
几帳面な性格らしく、埃一つもないように整えられたリビング。


(ヤバいなぁ。これじゃ汚せない)
私は身を引き締めた。


急に田舎の生活を思い出した。
私の部屋と此処を見比べるように。


これから田舎は冬の漁が始まる。
クリスマスや正月用にカニ漁が解禁になる。

そのために、底引き網の手入れをしなくてはいけない。

窓を開けると、その独特の匂いが入ってくる。

イヤではない。
でもそれは身体に染み込む。

通っている隣町の高校では、私の存在はそれだけで判るらしい。

原因は母の仕事着と一緒に洗濯されるからだと薄々気付いていた。
でもこれと言った対策はこうじてこなかったのだ。


それでも、ファッション雑誌にも興味を示したりする。
私も普通の女子高生だった。




 ホストは女性を食い物にする。
私はマジでそう思っていた。

でもそれは一昔や二昔前の話らしい。
今ではホストの写真集も出る位……


だからアイツもそのホストと言う職業に魂を入れているらしい。


もっとも、それはあくまでも兄貴の情報だ。

アイツの実体は解らない。


でも兄貴が安心だと判断したのだ。
この人の傍なら間違いないと思った。




 部屋に着いて一番先に案内されたお風呂場に備え付けられていた、全身をチェックするための大きな鏡に驚いた。

何時も身体を鍛える、それがナンバーワンを維持するために必要なんだって。

その上、あのガラス貼りのバスルームだ。

あれは、誰に見られても恥ずかしくない体作りのためだそうだ。
常に見られていると意識することが大事らしい。


でも私はその光景に衝撃を受けて早く田舎に帰ろうと思った。
それほど、今日の出来事はショックの連続だったのだ。


アイツが紳士的に接してくれてるのを良いことに、私は其処で暫く暮らすことになった。

東京で就職して生活するための活動と、少しずつでも空気に慣れておくためだった。




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