無垢・Age17
 ホストクラブは風俗営業法で、午前一時から日の出まで店を開けてはいけないらしい。

その関係で日の出営業の店が多発することとなり、午前中から酔っ払いが闊歩する町に変貌したようだ。




 アイツはその間仮眠を取り、夜明けから十時頃まで働いていた。

カラオケクラブでも同じで、客が歌って楽しむ分は良いそうで店側が盛り上げることは禁止なのだ。
それはグレーの部分にあたるらしい。


私がマンションに泊めてもらっていた時は、お昼には帰っていたのに……


今日はクリスマスイヴ。
だから何処もかしこも賑やかだ。
私は自分の行為が判らないまま、歌舞伎町をさ迷っていた。




 マンションにどうにか戻り、さっきまでアイツを待っていた。
でもドアは開かなかった。

クリスマスだから帰れないんだと思った。
でも心配でならなかった。
小さな鍵穴から覗いたアイツの部屋に、ベッドしかなかったことが気にかかる。

でもどうして鍵を掛けたの?

誰にも見せたくないからかな?

きっと私にもよね?


私が何時戻って来るか判らないから?

きっと、鍵を渡したことを後悔しているんだ。
私はそう思い込み、嫌われたのだと思っていた。




 歌舞伎町をさ迷い、やっと新宿区役所を見つけた。
早速そちらへと足を運んだ。
でも中に入る勇気はなかった。


何気に見た反対の路地にゴールデン街の看板があった。
信号が青くなるのを待ち、逸る足で向かった。

でも其処にはそれらしいものはなく……
辿り着いたのは公園のような通りだった。


都会のオアシス的な場所だと思った。




 やっと日没となり、本格的なイヴになる。

たった今から明日の日没までクリスマスが始まる。

午後五時前にもかかわらず歌舞伎町は賑やかだ。
クリスマスツリーに飾られたオーナメント。

その一つ一つにこの街の活気が伺われる。


明かりが灯されたツリーが、私の心を掻き立てる。
幻想的な雰囲気に包まれた歌舞伎町。

私はその中をアイツを求めいた。

自分でも何が何だか解らない。
私はアイツが恋しくてたまらなかった。

実の兄貴なのに……




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