無垢・Age17
 さ迷い続けたその果てに、やっとそれらしいお店を見つけた。

入って良いものかどうか悩みながら、その店の前を行ったり来たりしていた。

ホストクラブは風俗にあたり、十八歳未満は入店出来ないのだ。
私は高校三年生で、年齢は十七だった。
だから本当はアウトだったのだ。


「お嬢さんこんな所で何してるの? 一緒に遊んでいかない?」
いきなり、キャッチの人に声を掛けられた。


「いえ、結構です」
あまりの出来事に声が上ずる。
私はその時失敗をおかしていた。

いいです。結構です。
はタブーだったのだ。

それは相手側がオッケイしたものとみなす、好都合な言葉だったのだ。


「交渉成立」

そう言いながら、キャッチの人が近付いて来た。




 私は不思議に思った。
キャッチは確か禁止されているはずだったのだ。

私は東京に来る前に携帯サイトで歌舞伎町の情報を調べていたのだった。

店の営業時間とか諸々のことを。
その中に確かに、新宿駅付近のキャッチ行為は禁止されたと書いてあったのだ。


だから私は無視をして、近付いて来たそのキャッチから離れようとした。

そしたらいきなり手を捕まれた。


その瞬間に、あの光景が脳裏を掠めた。
私を襲った男達の顔が鮮明に甦ってきたのだ。


「ギャーー!!」
私は大声で泣き叫びながらその場で蹲った。

地べたにカエル座りになり、床に突っ伏した。


「ヤだ! ヤだ!! ヤだーー!!」
私は辺り構わず泣きじゃくっていた。




 突然呼吸が苦しくなった。


(パニック障害? あっ、過呼吸症候群だ。対処法は? あ、そうだビニール袋……)

私は慌ててバッグに手を伸ばした。


でもその中には入っていなかった。
間違いなく入れたのに、それは消え失せていた。


(きっと交番でバッグから零れ落ちたんだ。どうしよう。あれがなかったら、私は一体どうなっちゃうの?)

私は必死になって、遠巻きで見ていたキャッチの人に救いの手を差し伸べていた。

でも、その人は何もしてはくれなかった。

仕方なく私は自分の手で口を覆いその中で呼吸をし始めた。

でも呼吸は全部漏れてしまい、何の足しにもならなかった。

私の心は焦りだけが支配していて、どんどん冷静さを失わせていた。




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