無垢・Age17
 遺された片親同士に結婚話が持ち上がる。
そんなことは田舎には良くあるらしい。

それは働き者の母を傍に置きたい祖母が言い出したことだった。


母は新しい旦那の二人息子の母親代わりになった。


つまり東京の大学に通っている兄貴と、歌舞伎町でホストをしているアイツだった。


たとえ事実上の夫婦になったとしても、死に別れた日から半年間は戸籍に入れないのだ。

だから母は、二人を私の兄として可愛がったのだった。




 でも幸せは長く続かなかった。
事故の悲しみはもう一つの悲劇を生む。
苦労が祟り、我が子を死産させてしまったのだ。
涙に暮れる母に誰もが優しい。
でも母には負担だった。

無理に無理重ねた母に、現実は厳しかった。


難産の果てに死んで産まれて来た我が子。
それは亡くなった旦那が欲しがっていた後取り。
長男だったのだ。

その上、無理をした見返りとして子供を胎内で育てる機能を弱らせてしまったのだった。

それは幾ら望まれたとしても、二人の子供を胎内で育てられないと言うことだった。




 新しい旦那となる人は真面目だった。
その仕事認められ東京本社へ移動させらたのだ。
勿論栄転だった。

自動車工場の中にあっても優秀な技術者だったようだ。
他の会社の引き抜きも多々あったらしい。

だから、本社へ移動させられたのだ。


そんな時祖母が倒れた。
祖母も数知れない心労を抱えていたのだ。


それは事故を起こした船舶の会社が賠償金を払いたくなくてデマを流したためだった。

それは週刊誌を賑やかした。

事故は心中で、ぶつかってきたのは漁船側。

もう一方の記事では……
遺された連れ合い同士が、愛し合った末に仕組んだ事故。

そんな誹謗中傷的な内容だったそうだ。


子供達のためにと自ら言い出した再婚も引き合いに出された。
だから祖母は悩み、その体を衰弱させていたのだった。

実はまだその時法律上では二人は結婚していなかったのだ。

父の死後六ヶ月が経過していなかったのだ。


子供が産まれたら籍を入れようとしていた二人に、衝撃的な事実が突き付けられる。
母の子宮は次の出産に耐えられそうもないとの医師の見解だった。



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