無垢・Age17
 私達は兄弟ではなく、イトコだった。

母はアイツの本当の親ではなかった。

父は私がは小さな時に沖合いで亡くなっていた。

その船にはアイツの母親も一緒に搭乗していた。

父を亡くした私と、母を亡くしたアイツと兄貴。
悲しみにくれるそれぞれの連れ合いは、親の面倒を診るために結婚しようとしたのだ。

今でもそうだ。
田舎では、嫁の姉妹が後妻になることなんて当たり前だったのだ。


過疎だから、適当な相手が居ない。
そう言ってしまえば済む問題でもないのだが……


でもそれが後に自分達を苦しめることになろうなんて、本当に誰も想像していなかったのだ。

生き別れでも死に別れでも、女性の再婚は六ヶ月経たないと出来ない。
その前に別れが来てしまったようだ。


私は頭の中で整理していた。


(アイツの言った通り本当に結婚出来るんだ)

私の思考はその一点に執着した。




 母は神野のまま、海で死んだ旦那の姓のままで祖母と生活していたのだ。

アイツを預かった時にホームステイとしたのは、初孫を祖母に会わせるためだった。
でも田舎の人は口煩い。
結婚しようとしていた旦那の弟の子供だと知られたくなかったのだ。


学校の休みに合わせてアイツを呼び寄せた母。
本当はアイツの父親も一緒にと考えたそうだ。




 私を東京に行かせてくれたのは、本当はまだ旦那になるはずだった人を愛していたためなのかもしれない。
私はそう感じた。


祖母の葬儀に喪主として出席したのは、祖母の次男だった。

勿論アイツも出席していた。
私は悲しみのあまり、その事実を忘れてしまっていたのだ。

いや本当は覚えていて、ホームステイと一緒の記憶になっていたのかも知れない。




 「父は本当はみさとのお母さんを愛していたんだ。だから、弟を預けたのかも知れない。でも、だからって、海で死んだ本当のお袋を愛していなかった訳じゃないよ」
そう言ったアイツの目に涙が光った。


「母は兄貴のことばかり気にしていました。お父様から預かった大切な人だからこそ、結婚を楽しみにしていたのかな?」


「そうかも知れないね。アイツは本気で彼女を愛しているって言ってたし……」


「そうなんですか? 私には何とも……、でもこれで母の肩の荷も下ろせるかな?」

私がそう言うと、アイツは目を輝かせた。




< 57 / 122 >

この作品をシェア

pagetop