無垢・Age17
 「そうだ……確か歌舞伎町でも」


「目の前でみさとが苦しんでいるんだ。誰の目も気にならなかった。俺はみさとを助けたかったんだ」


「ごめんなさい。今まで忘れていたの。意識が朦朧としていたようで」


「えっ、嘘だろ?」

アイツは私の手を取り、束縛するように指を絡めた。


「もう一度……解らせてやる……」

アイツは私の体に覆い被さり、顔を唇に近付けた。


最初は軽く、まるでついばむようなキスだった。
何度もそれを繰り返し、次第に深くなる。

私はアイツに溺れた。




 アイツは私から悪夢を追い払うためにを優しく抱き締めた。


それでも震える私にアイツは優しい。

起き上がった私を、両手をいっぱい広げて包んでくれる。

そして、私が落ち着くまでいっぱいいっぱい愛をくれた。


「みさとをこの腕の中に閉じ込めたい。もう何処にも行けないように」

アイツの目に涙が光る。


「大丈夫。俺が守るから、みさとを守るから」

アイツの言葉に私は頷いた。


「それにしてもひどいな。俺の一世一代の名シーンを忘れていたなんて」
アイツがポツンと呟いた。




 私達はクリスマスが終わるまでにどうにか結ばれた。
きっとそれは、後々に二人だけの笑い話になるだろう。

それほど私は醜態した。
アイツはきっとイライラしながら待ったことだろう。
だって目の前に太陽が沈む寸前に……
やっとだったから。


「やれやれ、後が思いやられる」

アイツは思わず本音を洩らす。
それでも私は震えていた。
アイツの愛の大きさに震えていた。
アイツに全てを委ねることが出来た自分に震えていた。


私はその時やっと解放されたのかも知れない。

もう二度と出会いたくもない、あのハロウィンの悪夢から……




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