無垢・Age17
 「何故ゲイって書かれたのか知ってる?」

私は首を振る。


「実は、さっきのが初体験だったんだ」


「嘘っーー!?」
私は又突拍子もない声を上げた。




 信じられる訳がない。
歌舞伎町のナンバーワンホストが未経験だったなんて……


「俺は父の仕事の関係でずっと寮で暮らしていたんだ。でも祖母の見舞いで日本に来て、みさとに恋をした。でも大学で弟に会い、みさとが妹だと言われたんだ。だから、忘れるためにホストになったのに……」


「その寮では居なかったのですか?」
聞いてはいけないことだと解ってる。
でも、どうしても聞いてみたかったんだ。


「俺のことを好きになってくれた人はいたよ。でも、みんなにからかわれて。結局父親の仕事絡みで俺は彼処に居なくちゃいけなくて……、でもやはり駄目だと思って彼処を出てきたんだ。だってソイツとは……。俺にとっては恋ではなかったんだ。彼女じゃなくて、彼氏だったのさ」


「もしかしたらニューハーフ?」

私の質問に、アイツは頷いた。

「今、何処でも急増中らしいね」
アイツはそう言って笑った。




 「それともう一つ。仕事がらみのチャンスはあったよ。でもみさとのことを思い出して、結局駄目だった。だからゲイだってリークされたんだ」


「あ、昨日の人?」


「今。確かに美魔女や熟女ブームだけど、あの人はひどかった。でもあの人は解っちゃいない。お金で全て買えると思っているような人だから」
アイツはそう言いながら溜め息をはいた。


「その時だよ。急にみさとが脳裏を掠めたんだ。俺は恋をした事実を思い出したんだ」


「私があのオバサンのようになったら……」


「大丈夫だよ。どんなにぶよぶよになっても、俺は愛し抜くさ」
アイツはそう言いながらウインクした。


その時私は誓った。
もっともっと愛してもらうために太らないでおこうと。


(でも、田舎の料理は何でも美味しいだ。食べ過ぎたらどうしよう)

私は今十七歳。
そう食べたい盛りの女子高生なのだから。


就活は永久就職に決定。

私は両親と同じ道を歩いて行く。




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