無垢・Age17
 『俺は兄貴の友達で、歌舞伎町でホストをやっている者だ。俺が話し掛けたからこんなことになってしまった』
そう言っていたアイツ。

本当は私が本物の妹ではないかと思って怖かったそうだ。

もしかしたら妹を愛してしまったのかと感じて。
だから兄貴の友達だと言ったんだ。


三人の男性俳優に襲われている私を見た時、巡り合わせ驚愕したと言うアイツ。
運命を感じ、恋心を抱いた幼かった自分が舞い降りた。

その途端に又私に恋をしたと言うアイツ。

ナンバーワンホストになったばかりで、業界の裏の怖さを知る前だったようだ。


アイツとの一夜を目論んで、オーナーに内緒で手を回した実力者。
皆は知っていたそうだ。
アイツの秘密を……
まだ女性経験のない事実を……
だから、誰が一番乗りになるかを賭けたらしい。


そんなことだけで前任者をお払い箱にしたようだ。
永久指名権をジンに移すために……




 「みさとがどうにも忘れられなかった。失敗したらどうなるかも勿論解っていた。でもどうしても駄目だったんだ」

窓の向こう側に積もった雪が星の光を届ける。
そんな中で、私達は又見つめ合った。


もしあれが俳優陣でなかったら私は助からなかったかもしれない。
いきなりってことも有り得たからだ。
私は運命の不思議さを噛み締めていた。




 漁船の窓越しに見える雪を私は見ていた。
気恥ずかしさが先に立って、やはりアイツをマトモに見られないのだ。


不意にアイツが私の手を掴んだ。
その途端に私は目を瞑った。
でもハロウィンの悪夢は襲って来なかった。

解放された喜びに震えながらアイツを……
それでも私は恐る恐る見つめた。

その瞬間。
アイツの真剣な眼差しに釘付けになる。
アイツは間を挟まず私の唇を盗んだ。


擽るようなキスが少しずつ熱気を帯びる。
外気の冷たさを感じさせないほど暖かな口づけに心が揺さぶれる。

あまりに長いキス。
息継ぎの度に掛かるアイツの白い息。

口の周りだけが妙に生暖かい。


アイツの背中に手を添えると二人の距離が更に縮まり、甘くとろけそうなキスへと変わっていく。







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