無垢・Age17
 でも結局、私は笑い転げていた。

アイツは仕方なく私の肩を抱いてマンションを後にした。

もう二度と戻れない愛の巣に思いを馳せる。

それなのに、笑いを堪えることが出来なかった。


「それにしても豪快な笑い声だな。聞いててコッチも愉快になるよ」

そう言われて見ると、アイツも笑っていた。


「開けっ広げとか、大ざっぱとか言いたいんじゃない?」
私は笑いながら聞いた。


「いや、おおらかなんだよ。きっと色々吹っ切れたんじゃない?」

アイツは嬉しそうに言った。


そう……
確かに私は吹っ切れた。

ハロウィンの悪夢も、パニック障害からも……

だからつい、あんな笑い方になったのだ。




 でも冬休み中の小旅行はそれだけでは終わらなかった。

アイツはその後、美魔女社長のオフィスに立ち寄ってくれたのだ。


「お久しぶりでーす。社長ー!!」
私は、興奮していた。

目の前に新宿で会ったまんまの美魔女社長が居たからだ。

社長はあの時と同じ、十代だと言っても過言ではない美しさを保っていた。

でも、橘遥さんの顔を見るなり又吹き出した。


「何よいきなり。気色悪い」


「だってー。社長と橘遥さんが同期生だったなんて知らなかったんだもの」

私のその言葉を聞いて、橘遥さんの顔に焦りの色が見えた。


「三十路ねえー。アラサーねえー」
私は挑発していた。




 そう、あの週刊誌に書いてあったのは嘘だった。
アラフォーの社長の同期生がアラサーってことはないのだから。


「どうせだったら一回り。そうすれば干支も一緒ですよね?」
笑いを堪えて言う私。
口をトンがらがす橘遥さん。
二人は本当は親子ほど歳が違う。
だって社長と橘遥さんは同期生で、私の母とも少ししか離れていなかったのだ。
橘遥さんも美魔女だったのだ。


「アンタ良く記事を読みなさい!! 同期生で同級生とは書いてないでしょう? それに、そもそも社長が若過ぎるのよ!!」

橘遥さんが週刊誌の記事を指差しのながら、私に迫る。

私は思わず仰け反った。


「私達が大学の同期生になった時、社長はアメリカから帰国したばかりで……年齢は一緒じゃないのよ!!」

橘遥さんはそう言って部屋を出て行った。


「えっ!?」

私はとんでもない勘違いをしていた。
確かに同期生と同級生は違うのだ。



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