無垢・Age17
 「あの……、チェリーボーイって何ですか?」
私は明け透けに聞いていた。


「ぷっ!!」
其処にいた全員が吹き出した。


「田舎の高校生が、普通知らないわよねー」
橘遥さんは笑いを堪えながら言う。

みんな大笑いしている姿を見ている内に、とんでもない質問をしたのではないのかと思った。




 「チェリーボーイって言うのはね。日本だと未経験者という意味かな? でも英語では違うのよ。同性愛者での未経験って言う意味なのよ」


「週刊誌にゲイだと書かれていただろう? それも未経験だからチェリーボーイってタイトルだったんだ。ま、知ってる者は知ってるって感覚かな?」

アイツは笑いながら、私の疑問に真っ直ぐに答えてくれていた。


「みんな知っていたんですね」


「それが売りって訳ではないけど、誰が先に落とすかって賭けになっていたのかな? だから、沢山指名されちゃった訳よ」
私の質問に社長が答えてくれた。


(ああーん。やっぱり羨ましい)
私は相変わらず、社長にジェラシーを感じていた。
そうやってナンバーワンは生まれたのかな?


「オーナーが残念がっていたわ。彼ね、本気でジンにあのクラブを任せる気でいたからね」

社長が意味あり気に笑っていた。




 「そう言えば、私が此処に案内した時、『もしかしたらこれが歌舞伎町に繋がってる道?』って聞いていたわよね。そう……、あの発言はジンに逢いたいって意思表示だったのね」

美魔女社長の突然の発言に心臓と同時に肩も跳ね上がった。

あの日、思わず出た独り言に慌てて口に手を当てそっとその人を見たら気付いていないようだった。

だから安心していたのに……


「意地悪」

私はそう言いながらも微笑んでいた。




「あはははは、図星だった」
美魔女社長は大笑いをしながら私の肩を叩いた。


「私はジンに、知り合いのホストクラブを紹介したの。働きながら勉強したいって言うからね」
社長はアイツの様子を気にしながら続けた。


「あっ、そのオーナーがこの前此処にいた子の父親よ。アメリカで成功した人なの。アメリカンドリームって言うのかな? 物凄くお金持ちでね。日本に帰ってお店をオープンさせたの。そのオーナーが丁度ボーイを探していたから紹介しただけなんだけどね。」




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