無垢・Age17
 「日本ではそうみたいだね。でも他の国では誰から告白してもいいんだよ。だから、俺からの告白。みさとはそのままがいい。ホームステイした時のあのままで居てくれたら嬉しい」

アイツはそう言いながら、そっと私の手を握った。


「駅に着いたら暫くの間、俺の好きなようにさせてくれるか?」
アイツが突然言った。
私は疑いもしないで頷いた。




 「ごめん。これだけはどうしてもしてほしい」
そう言いながらアイツは太めのリボンを手にしていた。


「目隠し!?」
私の声が裏返る。


「どうしても内緒の場所に連れて行きたい。でも嫌なら……」
アイツは寂しそうに笑った。


「いいよ、試してみて。私も早く克服したいから」

本当は怖い。
怖くて仕方ない。

でもアイツが、私に危害を加えることなど絶対に無い。

そう信じてる。
だから私は目を瞑ったんだ。

そしてアイツの手がオデコに触れる気配を感じながら、そっと目を開けてみた。

あの日と同じ状態の中に身を置くために。




 途中下車した駅は全く知らない駅だった。

私は目隠しされたままで喫茶店に置き去りにされていた。

私は仕方なく、コーヒーを飲みながら待つことにした。

アイツにはどうしても行かなくてはいくない場所があるようだ。
其処が何処なのか私には解っていたのだ。


アイツが帰って来た時には持っていたはずの荷物が無くなっているように思えた。


そしてその後、私達は再び電車に乗ったのだった。
勿論目隠しをされたままで……




 駅に着いて、タクシーの中でも目隠しをされたままだった。
きっと運転手は気味悪がるな?

そんなこと思いながら笑っていた。


そう……
私は克服していた。
あの、ハロウィンの悪夢を……

でもアイツは駅に着い時、駅名アナウンスが鳴り響いていて焦ったようだ。


だから私にはおおよその察知は出来たのだ。


連れて行かれた先。
それはあのマンションだった。
たとえ……何も見えていなくても判る。
アイツは私を驚かせようとしているのだと――。


(あ、マンションの匂い)
それはどんなに、忘れようとしても忘れられないアイツの香り。


海の男となった今の香りではない、独特のスメルスイート。


橘遥さんの記事に笑い転げながらも嗅いでいたどうしょうもなく懐かしいフレグランスだった。



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