無垢・Age17
 ハロウィンの悪夢はもう襲って来ないと解ってはいたのだが、でもやはり怖かった

其処にどんなサプライズが待っているのか、からきし解らなかったから。




 冬休みの最終日。
愛を確かめ合ったあの部屋……
辛の字を手品のように幸に変えてみせた優しさ。
忘れられるはずがない。


アイツのサプライズが何なのか知る前から泣けていた。

どうしょうもないほど心は満ち足りていた。


(あのガラス張りのお風呂かな? それとも全身が映る鏡で……。ヤだ私ったら何てこと考えてるの。アイツに気付かれたら笑われちゃうよ)

でも、そう思うだけで体が疼いてくる。

そう……、
私は又アイツとの甘い一時を夢見ていたのだった。




 玄関のドアを開けて、目隠しを外されて驚いた。
其処には母がいた。見知らぬ男性と共に。


(えっ!?)
私はそのまま固まった。


(私は何を考えていたんだろう。アイツに抱かれることばかりに想いを巡らし、体を熱くたぎらせていた。どうしょうもないエロい女になっちまったのかな?)

顔から火が吹き出しそうだった。


きっと私は茹で蛸のように真っ赤な顔して其処にいるのだろう。


気恥ずかしさからまともに顔があげられなくなる。

私はもじもじと俯くことしか出来なくなっていた。




 「みさとどうした?」

アイツに声をかけられ我に戻った。


「あー、ごめんなさい。驚いちゃって」

私はボーッとして、目の前の二人を呆然と眺めていた。


誰かに似てる。
そう思った。
きっとアイツの父親だと悟った。

「神野みさとと言います。何時もしゅ……主人が御世話に……」
初めて、主人と言ってみた。
顔に熱が集中してる。


「主人が御世話になりました」
やっと言えた私に、その人はにこやかに微笑んでくれていた。

でも……
旦那様の父親に言う言葉かな?
私は又恥ずかしくなっていた。




 「あの……もしかしてお義父様ですか?」

私の質問に頷きながら、そっと手を伸ばして握手を交わしてくれた。

その手の大きさに私は心を踊らせた。
もし、母と結婚していたなら……
私はきっとこの手に守られた。
そう思うだけで体が芯から温まってくる。




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