無垢・Age17
 東南アジアからアイツの父親が東京に戻って来ることになった。
今日はその準備で、日本に一時帰国していたのだ。

だから思い付いたのだ。


あのマンションはホストクラブのオーナーの所有していた、新人ホスト養成所だった。

だからボーイとして雇われた時に貸与されたのだ。

オーナーは誠実なアイツが気に入って、将来は後取りにしたかったようだ。

だから、チェリーでも良かった。いやそうだから、娘を嫁がせようとしたのだ。
オーナーの娘は美魔女社長の事務所にいたあのモデル候補だったのだ。


社長とオーナーはアメリカで出会った。

奥さまに先立たれたオーナーがベビーシッターに雇ったのがあの社長だったのだ。

オーナーは社長との再婚を考えていたようだ。
だからあの時、ママと呼んだのだ。




 オーナーもアイツもずっとボーイのままでいいと思っていたようだ。

でも生まれついての美貌を放っておく手はない、と其処のスカウトの人に言われたらしい。


だから、自分を磨いて賭けに出たそうだ。

それがあの全身が映る鏡だった。
アイツは其処で体を鍛えていたのだ。


何時かチェリーが一人歩きを始めた。

誰がアイツを一番先に奪えるか。
それが賭けの対象になっていたのだ。


難攻不落の要塞だから、皆が群がったのだ。

ゲーム感覚の行為が人気を押し上げ、其処のナンバーワンに着いたのだった。


その裏に、あの年配の女性の悪巧みがあったことはオーナーは知らなかったらしい。




 「オーナーの話だと、平成十九年の二月に歌舞伎町ホストクラブ協会が始まり、健全なクラブ作りがなされたそうだ。オーナーはそれに賛同してお客様に楽しんでいただける店を目指したらしい。だから、俺は彼処で働き出したのさ」

私もそのことはインターネットで調べたから知ってる。

キャッチやぼったくりなどにも目を光らせる。
と書いてあった。


「清掃ボランティアや緑を増やすことにも尽力したようだ」


「凄いんですね。お堅いホストクラブだって言われる訳ですね」
私はそう言いながら、歌舞伎町をさ迷いながら見つけたあの公園のような路地を思い出していた。


(平成十九年か? まだそんなには経っていないのね。もしかしたら丁度ジンと出逢った頃なのかな?)

私はその事実を何故か運命的に感じていた。




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