無垢・Age17
 「ごめんねみさと。何も教えておかなくて……オーナーはあの部屋を本当は俺に譲るつもりだったらしいんだ。だからそのまま……」


(そうか。だからあの時のままだったのか)

私は目隠しされていても懐かしい匂いであのマンションだと判った。
その後誰も使用していないと言う証拠なのだ。


「だから又使わしてもらったんだ。親父は、会社の家族寮に住むはずだけど、オーナーはそのまま住んでも構わないと言ってくれてる。みさとは寂しくなるけど我慢してくれ」

アイツはそう言いながら背中に手を回して、二人の体を密着させた。


「さっきのお詫び。ぬか喜びさせちゃったから」
アイツは悪戯っぽい目で私を刺激した。


「判ってたの!?」
私は急に恥ずかしくなって体をを離そうとした。
それなのにアイツは更にきつく抱き寄せた。




 「いや、離さない。もっともっと妄想しようよ。それはみさとが俺を愛している確実な証拠だから」


「ヤだ、もう耐えられない。どんどんスケベな子になっちゃうよ」


「ん? ――て、ゆうことは……? 相当卑猥なことを想像してたな」
不気味な笑みを口元に浮かべ、アイツ顔が迫って来る。


「うわー。もうしません。だからお許しをー」


「いいや、許さない。もっと心をオープンにしようよ。その方が俺も嬉しい。よし、家まで持つかどうか根比べだ」
アイツは又不適な笑みをこぼす。


「ヤだ。途中で負けるに決まってる。そしたら、折角のガトーショコラが……」


「ん? ガトーショコラって、あのバレンタインデーの定番のか?」

アイツの発言に失敗したと思った。
内緒にしておきたかったのに……


私は自ら墓穴を掘って、結局全てをアイツに打ち明ける羽目になった。


クラスメートに攻められながらも守った結婚したと言う事実。

秘密にした訳はイジられたくなかったからだ。


でもアイツはそれすら、悪戯する武器に使う。


私はバレンタイン神父の処刑された経緯を調べたことや、クラスメート総出でチョコレートケーキを作ったきっかけなどを打ち明けていた。


「先生が言っていたの。『心を込めて作ると何でも美味しくなるの。でも神野さんのケーキはそれを超えて芸術品になった』って」




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