無垢・Age17
 水田はカルガモ農法。
山羊と同じように、草を食べながら排出物で稲を豊かに育ててくれるのだ。


豚による雑草処理。
木をも倒すその食欲は、荒れた山の管理向きだ。

人が入れない山が、豚によりよみがえったこともテレビが教えてくれたことだった。


その他、ウサギや鶏による雑草処理なども土地を肥やすようだ。




 アイツが懸念していた竹も、その解決方法を模索していた番組があったことを思い出していた。ご近所の悩みを皆で解決しようと言うものだった。


竹は傘をさして歩けるくらいのゆとり幅が必要らしい。

人間が作業し易いので、竹の子も栽培出来る。
これが農業の利益に繋がるそうだ。


その上伐採された竹は様々に加工される。

日本海にある越前では、竹人形が人気だった。
地元の特産物にもなりえるのだ。

又山羊や動物の放牧地の柵にも利用出来るかも知れないと思った。




 アイツはそれらの資料を集めて卒業論文を完成させると言ってくれた。




 アイツは何とか卒業論文を完成された。

そしてあのバレンタインデーの日に提出して来たのだった。


あの日途中下車した駅は全く知らない駅だった。

私は目隠しされたままでその駅の近くにある喫茶店に置き去りにされていた。

仕方なく、コーヒーを飲みながら待つことにした。

アイツにはどうしても行かなくてはいくない場所があるようだ。
其処が何処なのか私には解っていたのだ。


アイツが帰って来た時には持っていたはずの荷物が無くなっているように思えた。


そしてその後、私達は再び電車に乗ったのだった。
勿論目隠しをされたままで……


きっとその場所こそ、アイツが通っていた大学だったのだ。




『みさとに逢えて俺は変わった。愛すること。信じること。守るべき人の存在する喜びも、君に教えてもらった』
帰りの電車の中でアイツが囁く。

その声を聞きながら、車窓を流れる景色を眺めていた。


ハロウィンの悪夢から始まった恋は、トラウマまでも全て消し去ってくれた。
全てアイツの……
ジンの思いやりと献身によって。

私は今その心意気に報いる決意を固めながら卒業式に出席している。


蛍の光が流れる中で。




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