無垢・Age17
ジンサイド・ホワイトデーサプライズ
 卒業はみさとの内助の功で何とか決まった。


俺はあの卒業論文で、今後の日本の進む道を示せたと確信した。

それが、夜間部卒業を勝ち得たのだと思った。


卒業論文を制作するにあたって、みさとの力を借りてきた。

でも俺はそのことを恥じていない。
女房に卒論のアイデアを出してもらったことも堂々と担当教授にも話していたのだ。

もっとも、発表会の席では触れなかったのだが……

でも俺は、みさとへの評価だと思ったんだ。

学校側は共同研究を認めたのだ。
少なくとも俺はそう思っていた。




 俺がみさとに手渡した卒業決定通知。
みさとはそれを見て泣いていた。


『これでやっとお義父様に顔向けが出来る』
そう言いながら。

それを聞いて俺はハッとした。


『そんなのダメー!!』

突然、俺の頭の中にあの言葉が甦って来たのだ。

それはみさとの言うところの、美魔女社長のオフィスを訪ねた日だった。




 『ところで、ねえジン。大学はちゃんと卒業したの?』

その社長の言葉が俺は嬉しくて堪らなかった。


(ちゃんと覚えていてくれていたんだ)
素直にそう思った。


『実は今年卒業の予定でした。こう見えても、結構真面目に通っていまして、単位は獲得してあります。後は卒論だけですが、もういいか……なんて』
だから俺は、何気に言っていた。


『そんなのダメー!!』

その声に驚いて後ろを見ると、戸惑い隠せずに呆然としていたみさとがいたんだ。




 みさとが何故卒業に拘っていたのかを今更ながらに気付いた。

みさとは親父にすまないと思っていたのだろう。


もし俺が大学を卒業出来なかったら、みさとはきっと自分のせいだと嘆き悲しむ。


ホストを辞めさせてしまったことにも引け目を感じるような、本当に俺のことばかり気遣う女性だったから……




 みさとは俺が卒業式に出席するものだとばかり思っている。
でも俺は大学には行かないことにした。

此処で遣らなければいけないことが沢山あったからだ。


勿論みさとには内緒だ。


『卒業式には出席しなければいけないな』
何て言ってある。

それが一番彼女を喜ばせることだと承知しているからだ。


だけど、どうしても試してみたいことがあるんだ。

別に、みさとを怒らせたい訳ではない。
反対に喜んでもらいたいんだ。




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