無垢・Age17
 だからみさとが疑わないように、朝早く出掛ける振りだけはしようと思っていた。


今、みさとが出席している卒業式の後にやって来るホワイトデー。

俺はその日に、又飛びっきりのサプライズを考えている。だからそのための大作戦なのだ。




 それが何なのか?
今は秘密だ。

きっとみさとは目を真ん丸にして驚くぞ。

その顔が見たいんた゛。

だから口が裂けても絶対言えない。




 みさとにはすまないと思っている。
きっと泣かれるだろう。


悔し涙と嬉し涙。
その両方で……


俺は今度来るホワイトデーに全てを賭けてみることにしたんだ。

俺達の未来と、地域の将来のために。




 あのガトーショコラは美味しかった。

結局、バレンタイン当日には帰って来られなかったけどね。


みさとの心が、これでもかと言うくらいに込もっていた。

家庭科の先生の力を借りたとは聞いている。

でもそんなことは関係ない。

俺に贈ってくれようとした行為が嬉しいんだ。


親父とみさとの母親を引き合わせたバレンタインデー。
彼処へ向かう電車の中で目隠しをした時、本当は俺の手は震えていたんだ。


みさとを守るとあのハロウィンの日に決めた。

だから弟に、俺は夜間部と仕事で居なくなるからマンションをみさとに貸すことを提案したんだ。


でも、俺は結局みさとを喫茶店に残して卒論を提出するために大学へと向かってしまったのだ。

みさとがどんなに心細いか知りながら……


あのハロウィンの日に男性俳優陣に目隠しされて拉致されたみさと。

全く同じ状態を俺は作った。

それで、良く彼処に独りで置いて来られたものだと後から震えが止まらなくなったんだ。


だから俺はナイト失格だと思う。

それでも、いやそれだから、みさとに相応しいナイトになろうと思ったんだ。




 だからこそ、忘れられないくらいロマンチックな夜を演出したいんだ。


俺はみさとを泣かせてやりたい。
嬉し涙を流させてやりたい。

頬を伝わる涙を唇で拭いたい。
それが永いキスへと向かう序章だ。


焦らすだけ焦らして……
みさとをイライラさせてやる。

そう……
あの言葉がみさとの口を突いて出るまでは。


俺の意地悪は今始まったことではない。

みさとを見ると、つい構いたくなるんだ。




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