無垢・Age17
 俺を見つめる瞳の中に俺への愛が溢れているから。

みさとを見つめる俺の愛がその瞳の中にくっきりと映し出されているから……


俺はあの瞳を見つめる度に震え出す。

こんなにも愛しい人に巡り逢うことが出来た奇跡と軌跡に感謝せずにいられなくなるんだ。


だから……
もっともっと俺を愛してもらいくてちょっかいを出したくなる。
みさとが耐えきれなくなるまで、焦らしてやりたくなるんだ。


その後の愛の行為を最高潮で迎えるために。




 バレンタインデーのお返しに、今度は俺が何かを作ろうと思う。

甘い甘いキャンディ?
それともフワフワマシュマロ?

ホワイトデーの定番はそんなとこだろう。


みさとはきっと、美味しそうにそれを頬ばる。

俺はそのタイミングで唇を近付ける。
その後で又キスの嵐だ。


みさとの唇は甘くなっているはずだ。

だからその唇をもっともっと甘くするために……
俺は口付けをする。


角度を何度も変えては戻す唇にみさとはきっと焦れったくなる。


『お願い……ジン抱いて……』

又あのセリフを言わせてやりたい。

あの光景と言葉を思い出す度に俺は気持ちを奮い起たせる。


漁船で危険な目に合うこともある。
もしかしたらこのまま死ぬのか?
そう思ったこともある。


そんな時、みさとが脳裏に現れる。

あの言葉を又聞きたくて……

ただそれだけで、危機を乗り切って来られたんだ。

全身全霊でみさとを又愛したいと思うことでやって退けたんだ。

それがどんな目に合っても生還した理由だ。

だからみさとにお礼をしたいんだ。


俺の勝利の女神。
みさとへの愛をこの身体で伝えるために。




 式の後でみさとは卒業生達と一緒に食事会の予定だ。


『最後の日だ。ゆっくり楽しんでおいで』

みさとにはそう言ってある。


だからその間に……
みさとの目を盗んでは走り回ろうと思っている。
と言っても自転車だ。

俺が乗っていたバイクは父が会社の社宅に持って行ってくれた。

いくら何でも、此処から持ちに行くことなんて無理だったからだ。
そう……
結局親父達は社宅で暮らすことになったのだった。


今日一日で何が出来るかなんて解らない。

でもやってみないと始まらない。

俺は強気だった。




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