坂口美里とガルダスト

「あ・・・。そういえば、一度だけ。あのバカ兄貴が言った言葉がある・・・。」


「どんな言葉かしら?」


 カオリの笑顔は揺るがない。


 まるで、全てを見通すような顔。


 それが、演技だってことは分かるのに、その笑顔がどこか安心できる。


 お姉ちゃんに、見守られている・・・そんな安心感・・・。


「『未来は心配したところで、何一つ変わらない。未来を変える方法は、二つだけ。やったのか。もしくは、やらなかったのか。』・・・・。」


 この言葉も、誰かの受け入りらしいのだが、私は、元ネタを知らないから、一応、兄貴の言葉として解釈している。


「いい言葉ね・・・。さすが、美里のお兄様だわ。私も、そう思うわ。」


「でも、だったら、やらない方が・・・。」


 ガルダストなんてもの作らない方が・・・。


「ねぇ、美里・・・この世界は、私たちの世界とよく似ているわ。」


 突然、遠くを眺めながら、カオリは口を開く。


「え?」


 唐突の物の言いように私の頭は一瞬、混乱する。


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